読書メモ

大塚英志『「おたく」の精神史』

「おたく」の精神史―一九八〇年代論 (朝日文庫 お 49-3)作者: 大塚英志出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2007/03/07メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 112回この商品を含むブログ (35件) を見る 大塚英志『「おたく」の精神史』を一気に読んで、正直励ま…

國分功一郎『来るべき民主主義』

来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題 (幻冬舎新書)作者: 國分功一郎出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2013/09/28メディア: 新書この商品を含むブログ (40件) を見る 國分功一郎『来るべき民主主義』(幻冬舎新書、2013年)を読んだ。 …

川村湊『原発と原爆 「核」の戦後精神史』

原発と原爆---「核」の戦後精神史 (河出ブックス)作者: 川村湊出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2011/08/02メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 12回この商品を含むブログ (6件) を見る 本書を読んだ。そいでamazonにレヴューを書いた。以下そのレヴュ…

足元の耳で聴く、貝の歌――金子光晴、東南アジア的土着性、存在感情

「題名のない残念会」*1という友人が主催のラジオに参加させてもらい、金子光晴について少し語った。そこでは緊張と、緊張をはぐらかすためのお酒で、うまく言いたい事をいえなかったり、終わってすぐ気付くちょっとした間違いもあったこともあって、さらに…

シェイクスピア『オセロウ』

かつて書いた文章で、なぜかupしないままになっていたのがあったので、どうせなら、あげておく。以下。オセロウ (岩波文庫)作者: シェイクスピア,SHAKESPEARE,菅泰男出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1960/06/25メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 3回この…

一宮真佐子「マンガにおける農村の「性」とジェンダー――「むら」のファンタジー」(『セクシャリティの戦後史』京都大学学術出版会、2014年)

セクシュアリティの戦後史 (変容する親密圏・公共圏)作者: 小山静子,今田絵里香,赤枝香奈子出版社/メーカー: 京都大学学術出版会発売日: 2014/07/28メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る タイトルにあげた論文を読んだ。論文の分析対象は、197…

吉本隆明① 「民」と 父と母

吉本隆明全集〈6〉 1959-1961作者: 吉本隆明出版社/メーカー: 晶文社発売日: 2014/03/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 自分の父は、1946年に福井で生まれて、1959年に中卒のまま、上京して、以後職を転々としたひとで、けれども30過ぎ…

『文化と社会を読む 批評キーワード辞典』

文化と社会を読む 批評キーワード辞典作者: 大貫隆史,河野真太郎,川端康雄,三浦玲一,近藤康裕,秦邦生,鈴木英明,遠藤不比人,越智博美出版社/メーカー: 研究社発売日: 2013/08/22メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (8件) を見る この著作…

斉藤なずな「「恋文」―宮澤賢治と保阪嘉内―」

斉藤なずなさんの「「恋文」―宮澤賢治と保阪嘉内―」*1を読んだ。 賢治の諸作品、とりわけ銀河鉄道の夜を、保坂との関係から描いた作品と言える。じぶんも賢治の、いつも 二人であること と さまざまな他(みんな)へ開かれていくことの二つの極の間での揺れ…

坂口恭平『独立国家のつくりかた』、高村友也『スモールハウス 3坪で手に入れるシンプルで自由な生き方』

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)作者: 坂口恭平出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/09/28メディア: Kindle版購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (6件) を見るスモールハウス 3坪で手に入れるシンプルで自由な生き方 (DO BOOKS)作者: 高村…

ルディネスコ『ジャック・ラカン伝』 b

ジャック・ラカン伝作者: エリザベトルディネスコ,Elisabeth Roudinesco,藤野邦夫出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2001/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (12件) を見る 昨日に続いて、ラカン伝。c. 面白く噴出すような…

ルディネスコ『ジャック・ラカン伝』 a

ジャック・ラカン伝作者: エリザベトルディネスコ,Elisabeth Roudinesco,藤野邦夫出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2001/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (12件) を見る ラカン伝を読んだ。フランス人特有のレトリック…

杉山春『ルポ 虐待――大阪二児置き去り死事件』

ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件 (ちくま新書)作者: 杉山春出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2013/09/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (23件) を見る 以前どっかの週刊誌で読んで記事が印象深かったので、book offするのを待つかいま買うかでし…

8月の読書記録a

生活保護:知られざる恐怖の現場 (ちくま新書)作者: 今野晴貴出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2013/07/10メディア: 新書この商品を含むブログ (13件) を見る たまには本気で読書記録をつけてみようかと。 ひとつめは生活保護に関する本。具体的事例に富んで…

『ギリシア悲劇 2』

ギリシア悲劇〈2〉ソポクレス (ちくま文庫)作者: ソポクレス,松平千秋出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1986/01/01メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 18回この商品を含むブログ (22件) を見る「アンティゴネ」ソポクレス*1 「アンティゴネ」をようやくなぜ…

國分功一郎『暇と退屈の倫理学』

暇と退屈の倫理学作者: 國分功一郎出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2011/10/18メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 13人 クリック: 146回この商品を含むブログ (128件) を見る 一点だけ、気になったこと―些細なことだが―があった。それについて書く。…

ピエール・クロソウスキー『生きた貨幣』

クロソウスキーの1970年刊行の評論集。前年1969年には、『ニーチェと悪循環』を刊行している、ちなみに。この本の挿絵には、小説三部作をまとめた『歓待の掟』の一場面が使われており、『ロベルトは今夜』が1953年で、『ナントの勅令』が1959年、そして『プ…

ダニエル・スターン『乳児の対人世界 理論編』小此木啓吾・丸太俊彦監訳、神庭 靖子・神庭重信訳、岩崎学術出版社、1989年。

乳児の対人世界 理論編作者: D.N.スターン,神庭靖子,神庭重信出版社/メーカー: 岩崎学術出版社発売日: 1989/10/20メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (1件) を見る ダニエル・スターンの本を読んだ。これについては以前図表をあげたことが…

本谷有希子『生きてるだけで、愛。』*1

生きてるだけで、愛。 (新潮文庫)作者: 本谷有希子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/03/02メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 30回この商品を含むブログ (73件) を見る 生きているだけで、愛。この陳腐な言葉は、どこか前付き合っていた、精神が不安定で…

プラトン『パイドン――魂の不死について』

副題にあるように、魂は、死にゆく肉体と異なり、またそこから離れて、不死であることを、対話の中でソクラテスが語る、それが『パイドン』である。 プラトンの作品は、初期・中期・後期に分けるのが通例である。ソクラテスが毒杯を呑むに至る、裁判が叙述さ…

柄谷行人『哲学の起源』2

b) 柄谷は、「イソノミア」を、アーレントの議論を用いながら、それでいてアーレントを批判しながら、自由と平等とが対立しないものとして提出するのだが、そのとき「イソノミア」をプラトン―アリストテレスによるソクラテスではない仕方で、歴史的ソクラテ…

柄谷行人『哲学の起源』

物質主義についての読書の一貫の一つとして、柄谷行人。大学四年のときに、彼の一連の著作を読んで以来、久しぶりに読んだ。 なぜこれが物質主義と関わるか。それは、彼が提出する”イソノミア”が、イオニアの自然哲学者たちの政治社会に現れているからである…

フォイエルバッハ『唯心論と唯物論』

最近、徹底的に古典的な物質主義(マテリアリスム。「唯物論」という訳は適切では決してない)に関する本を洗い出し、網羅的に読もうと思い読んだ。 マテリアリスムについては、だいたい全共闘時代の人たちや、70年代80年代を大学で過ごした人たちは、一定の…

鈴木大介の著作 −−傷付きやすさについて

以前、愛読しているblogでとりあげられていた鈴木大介さんの三つの著作を一気に読んだ*1。家のない少女たち 10代家出少女18人の壮絶な性と生 (宝島SUGOI文庫) (宝島SUGOI文庫 A す 2-1)作者: 鈴木大介出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2010/10/07メディア: 文…

 複線的な世界へ

今日は、font-daさんに勇気をもらったので、書き連ねたいと思います*1。 font-daさんの引く引用は、すべてわたしを深いところで奮い立たせようとします。どれもが納得のいく言葉でした。kayaの問題点もそれへのfont-daさんのすべてその通りに感じました。で…

 金原ひとみ『蛇にピアス』

金原ひとみの『蛇にピアス』という小説があります。生の「実感」に関して興味深い体験が、そこでは記述されています。 いくつか引用してみましょう。 「(...) 私は彼の舌に魅せられた。そう、私は彼の二手に分かれる細い舌に魅せられた。どうして、あんなに…

斉藤史のことば ――不自由さを生きるということ

おいとまをいだただきますと戸をしめて出てゆくやうにゆかぬなり生は 過日、93歳で亡くなった斎藤史の歌である。彼女の父、斎藤瀏(りゅう)少将は二・二六事件に連座して位階を剥奪され、下獄。彼女の幼なじみは処刑された。このような歴史をともに生きた彼…

「表現としての飲酒――AA誕生時に見られる自覚の伝達を巡って――

先日、脇坂真弥さんの「表現としての飲酒――AA誕生時に見られる自覚の伝達を巡って――」という論文を読みました*1。この論文を手にした理由は、なにかに依存せずには“生きられない”という状況をこの論文は扱っているからです。私は、生に否定的に付きまとう…

鈴木謙介『カーニヴァル化する社会』

鈴木謙介『カーニヴァル化する社会』*1について。まず、鈴木が問題にしているもので、私が共有するものをその理由とともに考えます(1)。ついで、その問題に関して可能な議論を考えます(2)。 1. 問題点の共有 本書は、21世紀を迎えた日本社会にあって、…

黒崎剛「「死ぬ権利」をどう考えたらよいか――自殺件の虚構性と安楽死の根拠――」

黒崎剛「「死ぬ権利」をどう考えたらよいか――自殺件の虚構性と安楽死の根拠――」*1を読んで考えたこと。 当論文は、自殺や安楽死が問題となるときに主張される「死ぬ権利」について、まず歴史的に(言説として)それがどのように登場してきたかを俯瞰すること…